漫画家まどの一哉ブログ
「逃亡派」 オルガ・トカルチュク
読書
「逃亡派」オルガ・トカルチュク 作
(白水社エクス・リブリス)
2018年度ノーベル文学賞受賞。
作者は旅する人であり、116もの旅にまつわる断章を集めてつくられた1作。体験談・エッセイに近いものから、本格的な中編小説まで。はじめからこういった構成を意図して書かれたもの。空港での小さなエピソードひとつとっても心のひだに染み込むような味わい深さがあり、読んでいて楽しい。
実は旅以外の題材もあり、目立っていたのは人体解剖と樹脂加工による標本保存(プラスティネーション)である。作者がなぜこれほど人体標本にこだわるのか、もちろんプラスティネーションに感銘を受けたからだろうが、中編も含めてたびたび出てくる。これだけでも特殊なことで、人体標本小説だけで一冊編んでもいいと思う。
表題作「逃亡派」は、平凡な主婦である主人公が、ある日ふと家に帰るのをやめて地下鉄と駅を使って放浪し、逃亡派とよばれる奇妙な思想団体のホームレスの女と親しくなって何日かを過ごす物語である。ほんの少しの日常からの逸脱だが、逃亡派の女が偏屈で世間と敵対しているのが面白い。こんな人は実際いるだろう。こんなひとときの放浪も旅のひとつかもしれない。
「逃亡派」オルガ・トカルチュク 作
(白水社エクス・リブリス)
2018年度ノーベル文学賞受賞。
作者は旅する人であり、116もの旅にまつわる断章を集めてつくられた1作。体験談・エッセイに近いものから、本格的な中編小説まで。はじめからこういった構成を意図して書かれたもの。空港での小さなエピソードひとつとっても心のひだに染み込むような味わい深さがあり、読んでいて楽しい。
実は旅以外の題材もあり、目立っていたのは人体解剖と樹脂加工による標本保存(プラスティネーション)である。作者がなぜこれほど人体標本にこだわるのか、もちろんプラスティネーションに感銘を受けたからだろうが、中編も含めてたびたび出てくる。これだけでも特殊なことで、人体標本小説だけで一冊編んでもいいと思う。
表題作「逃亡派」は、平凡な主婦である主人公が、ある日ふと家に帰るのをやめて地下鉄と駅を使って放浪し、逃亡派とよばれる奇妙な思想団体のホームレスの女と親しくなって何日かを過ごす物語である。ほんの少しの日常からの逸脱だが、逃亡派の女が偏屈で世間と敵対しているのが面白い。こんな人は実際いるだろう。こんなひとときの放浪も旅のひとつかもしれない。
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