漫画家まどの一哉ブログ
「貸本マンガ史研究 03」 特集:辰巳ヨシヒロと劇画
読書
「貸本マンガ史研究 03」 特集:辰巳ヨシヒロと劇画
貸本マンガ史研究会発行
「貸本マンガ史研究 03」 特集:辰巳ヨシヒロと劇画
貸本マンガ史研究会発行
亡くなった辰巳ヨシヒロ氏の思い出をめぐりたくさんの方の追悼と、その業績に対する評価・研究がぎっしりつまった特集号。
自分は年齢的には貸本漫画の最後期を少し経験しているが、幼かったため有名な「影」「街」などの高学年向け劇画誌は知らない。漫画の歴史を検証することにさほど興味は無いが、過去の貸本漫画の表現にもおもしろいものはたくさんあるようだ。露骨に映画のカメラワークをなぞったような表現は今見ると珍しい。
それまでの児童漫画に課せられていた勧善懲悪・希望・ユーモアなどを振り払い、作者を含む当時の労働者青年にリアルに寄添うものを目指した「劇画」という一大実験だが、実は立ち上げ当初から実質的には終わっていたかもしれない?その過程が辰巳氏本人の言葉をはじめ、各研究者の論考で明らかにされていく。
ただ辰巳さんが「さそり」などガロに短編を連作する以前の貸本漫画作品は、リアルと言っても当時人気のアクション映画などの設定で描かれているので、所詮限界があるという気はする。さいとうたかをがトップを走る所以でもある。苦悩する労働者青年のリアルというのとアクション映画のようにリアルというのはリアルの意味が違う。
追悼文の中では最後まで辰巳氏に寄添った田中聡氏の壮絶な報告が胸をうつ。また八代まさこ氏が辰巳氏のファンだったのも以外だった。つげ義春氏の追悼文の末尾に、「死によって全てが終了するのではなく魂=波動は残る…」云々とあって、実に驚いた(笑)。
つげ忠男インタビュー、「貸本時代の水木しげるの画風変遷史」川勝徳重、も面白い。
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