漫画家まどの一哉ブログ
「生物から見た世界」 ユクスキュル/クリサート
読書
「生物から見た世界」 ユクスキュル/クリサート 著
「生物から見た世界」 ユクスキュル/クリサート 著
「還世界」とは聞き慣れない用語だが、環境世界がわれわれ人間が知覚している地球環境全体だとすれば、その逆に個々の生物に固有の閉じられた世界のようなものと考えて読んだ。なるほど世界を認識するための装置は生物によってそれぞれずいぶん違っていて、認識できない範囲のことがらは世界には存在しないことになる。
われわれはつい擬人化して考えてしまいがちだが、人間の知っている環境世界をどの生物も同じように認識していて、その中でその生物なりの生きていくための技術を総動員しているわけではない。
ここではダニやウニやクラゲやハエの例があげられるが、ダニの知覚は木の枝に昇ること、動物の臭いを感知して落下すること、動物の皮膚表面を認識することのみで構成されていて、他の世界を知らない。ダニにとって世界はものすごく簡単なものとなっている。部屋に入り込んだハエの脳内にはエサと照明以外のベッドや椅子などは存在しない。また鳥にとって動いていない虫は存在しない。キリギリスの雌にとって音を遮断された状態で鳴いている雄は目の前にいても存在しない。
というようなことは知らないわけではないが、ネットなどで愉快な動物達の動画なんぞを見て笑っていると、ついつい忘れてしまう。鳥でさえ意志や感情は人間と同じだと思うが、やはり世界認識は違うのだろう。
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