漫画家まどの一哉ブログ
「おばけずき」 泉鏡花
読書
「おばけずき」 泉鏡花 作
「おばけずき」 泉鏡花 作
鏡花怪異小品集と副題にあるが、純粋な小説作品は少なく小文集といった内容である。いかにも鏡花ならではの怪異短編は巻頭の「夜釣」ぐらいで、他はおばけに少しふれるか、なにやら恐ろしい感じがしたくらいのものだ。「夜釣」のみが短いながらも怪談の手法をきちんと駆使して書いてあった。
小説の他にも「露宿」など関東大震災の体験を中心に身辺を描いたエッセイなどが多くあって、震災後火災を避けて公園に2泊するようすがそのままに報告される。その他ご承知のとおり人一倍の恐がりの鏡花が、自身の恐がりようもありのままに怪異を求めて旅先を漫歩するなど。だがやはり個人的には日常より非日常、ルポより空想のほうが楽しい。
それにしても鏡花の文体は多彩で独特のリズムがあって、慣れれば乗ってゆけるが、ふと気持ちを切らすととたんにつまずき始める。べつに難しい語り口ではなく、ごく平易な普段着の…といってもその普段着がイカしているからか、自分の読書力ではとうてい追いつかない。
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