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「血の涙」 李人稙

「血の涙」
李人稙 
(光文社古典新訳文庫・波田野節子 訳)

韓国文学を古典から近代へと繋ぐ「新小説」の開拓者李人稙(イ・インジク)の代表作。1906年作品。

日本による植民地支配がじわりじわりと進行する中で、日本への留学生たちの手で少しずつ変わり始める韓国文学。その先頭に立っていたのがこの作者。この辺りの文学史はまったく知らなかったし、またそれまでの韓国古典文学も当然よくわからない。「新小説」というジャンルに触れるのも初めて。

驚いたのはあまりに簡単に超スピードで進んでいく語りぶりで、なにか紙芝居を読んでいるような感覚だった。言文一致や人物の心情描写は近代文学への第一歩だとしても、この進行の速さは例えば江戸時代の戯作文学の感覚かもしれない。その点では近代文学を読んでいる読み応えは全くない。

ただ反対に明治期の日本文学に比べるとスケールは大きく、祖国を離れて日本・アメリカに渡り、教養・実業を蓄えて祖国を近代化しようとする人々。主人公の不遇の秀才少女オンニョンや行動を共にする青年、アメリカで実業に励む父親、絶望の日々を送る母親。など家族は日清戦争下で離れ離れになった運命のままに苦闘する。大長編ストーリーをあらすじだけでしあげたような味わいだった。

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