漫画家まどの一哉ブログ
「薔薇とハナムグリ」 モラヴィア
読書
「薔薇とハナムグリ」 モラヴィア 作
「薔薇とハナムグリ」 モラヴィア 作
シュルレアリスム・風刺短編集という副題。たしかにちょっと不思議なエピソードばかりで、それを読者が納得できないまま謎を謎のままで終わってしまうあたり、シュルレアリスムとよばれてもいいかもしれない。
ただ自分は本来のシュルレアリスムとはこういった作為的な技術を使ったものではなく、作者が意図しないところで幻想的な展開になってしまっているものと考えているので、これをシュールと言うのは少し違うと思う。
表題作などあきらかに動物を使った風刺・寓意小説で、とくにシュールと考えずに楽しめば良い。
パパーロとよばれる投資対象商品で失敗する一家の話は、パパーロなる物がなんなのかまったく解説されない。またお金持ちの夫人達がファッションとして背中に平然とワニを背負っていたりして、これらは意図されたシュール。
薔薇の蜜を好むハナムグリ達の中で、一匹だけキャベツを好むというマイノリティの孤独。来世でいけすとよばれるユートピアに行けると信じられていた蛸の社会。これらは典型的なわかりやすい寓意小説。
古くからある結婚式場で、参加者が次々と天井高く吊り上げられ、どこかへ消えてしまう不思議。島に住む怪物の見る夢のままに暮らしを左右されてしまう島の人々。こういったものは幻想的でよかった。
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