漫画家まどの一哉ブログ
「神曲」煉獄篇 ダンテ
「神曲」煉獄篇
ダンテ 作
(河出文庫・平川祐弘 訳)
地獄めぐりを終えウェルギリウスの魂とともに煉獄を旅するダンテ。山頂の楽園を目指し、過酷な登山道をゆく。
煉獄という設定が元々あいまいでよくわからないが、天国を前にした比較的平和な世界だと考えていたら大間違いだった。地獄と負けず劣らず、今度は険峻な山登りで、途中次々と高慢・嫉妬・怠惰・貪欲などの罪業を背負った者の苦しむ姿を見ながら進むのである。一歩間違えば崖下へ落下する険しい道で、期待していた明るさというものが少しもない。またギュスターヴ・ドレの挿画が常に暗く寂しく、その印象を後押しする。
ようやく平和な山頂へ出て、先に亡くなり天女となったベアトリーチェに出会うことができるが、彼女はダンテの堕落した生き様を難詰するのである。恥入って口もきけないダンテ。いったい何をしたというのだろうか。師匠ウェルギリウスもそうだがみな一様に厳しく、そもそもキリスト教の神様は温かく愛で包んでくれる者ではなく罰を与える恐ろしい存在である。神の怒りを招かないよう謹厳をモットーに過ごさなければならない。