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漫画家まどの一哉ブログ

   
「痴愚礼讃」 エラスムス
読書
「痴愚礼讃」エラスムス 著
(慶應義塾大学出版界)

学生の頃、中央公論社「世界の名著」でその存在に気付きながら今になってようやく読んだ。
痴愚神がいかに人間の幸福に貢献しているか、女神様自身が丁寧に解説。利口であることにより訪ずれる様々な苦悩・不安・逃れられないストレス。それに比べて馬鹿であることがいかに生活に安寧と喜びをもたらしていることか。これは様々な具体例を示されるに及ばず、われわれ凡夫が素直に得心できる内容である。語り口も平易でわかりやすく楽しんで読める。ホルバインによる挿絵多数。

読み進むにつれしだいに神学上の煩瑣で不毛な論争の風刺・批判となってくる。くわしいことはわからないが案外興味深いものがあり、神の生成には瞬間があるか?父なる神が子を嫌うというのは可能か?神が女や悪魔や驢馬やヘチマの形をとることができるであろうか?など、これが神学なら外からなぞってみてもけっこう面白いかもしれない。

終わりに近づくにつれ、イエスが愛したのは知性を持つ者ではなく、考えない者、無垢な者。まさしく迷える子羊であったことが説かれる。敬虔さとはなにか。キリスト教は愚かさと親近性を持っていて賢さとは一致しない。愚かさのみに罪の許しが与えられ、智者には与えられない。ここに至っていよいよ痴愚神の存在する意味の核心に触れる。これはたいへんだ。

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