漫画家まどの一哉ブログ
「文章の話」 里見弴
読書
「文章の話」里見弴 著
(岩波文庫)
「文章の話」里見弴 著
(岩波文庫)
1935年~37年、全16巻で刊行された「日本少国民文庫」。中には「君たちはどう生きるか」も含まれるが、第13巻にあたるのが本書。子供向けと言いながらその内容は里見弴ならではのかなり高度な人間解説で、中学生はもとより大人でも気づかされることが多い。
「文章の話」といいながら「言葉と思想」「自と他」「自他と意思」など前半は独自の哲学的な話題で、これがどんな文章を書く場合でもその根底にあるべきだという立場だ。大きな人類史の中で自分の存在している位置を『誕生点』を記すことによってグラフ化したり、年齢を経るにつれて下がってくる喧嘩の統計を図にして喧嘩線であらわしたりと、まことにユニーク。なかでも「自と他」は、生まれながらの自分の地の部分に、生きている間に知らず知らず他の要素が混りこんでいて、もはやきっぱり自と他を分けて考えることはできないのが人間であることを解説。なかなか面白い。
後半やっと文章の話が始まったかと思うと、これはまあ常識的でさほど驚くべきところはない。それより前半、話し言葉の例として出される「ゲーム・セット、やあい、勝った、勝った」「あんなこと言ってらあ!ちぇっ、ずるいやずるいや」「健棒だ?何が健棒だい、あんなもの」「何さ、どうしたのさ」などすべてが今では聞かれない言い回しでおもしろかった。
PR
COMMENT