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漫画家まどの一哉ブログ

   
「田園交響楽」 ジッド

読書
「田園交響楽」ジッド 作
(新潮文庫)

キリスト者としての使命感から、孤児となった盲目の少女を引き取った牧師。批判的であった妻も協力するが、少女が成長するにつれしだいに牧師自身も気づかなかった愛が見えてくる。

ジッドは信念を持ったプロテスタントであるが、この作品の中でもカトリックとの相克・問題提議が多く見られる。牧師の長男が頑なな性格で律法による信仰を旨とする立場をとり、プロテスタンティズムに疑義を投げかけるが、それでも自身の自由な愛と信仰を捨てない牧師。これらの問題提議がパウロやキリスト自身の言葉を引きながら繰り返される。「もし盲目なりせば、罪なかりしならん」(キリスト)対して「いましめによりて罪さらに猛しくなれり」(パウロ)などなど…。
そして1匹の迷える子羊(盲目の少女)を救うために、他の子羊(自身の子供達)を山に残すのは正しいのかという問いも、妻からの問題提議として物語のはじめから未解決だ。
前半「第1の手紙」を、そのあたりを巡りながら読んでいると、なんだか不穏な雲行きが…。

そして後半「第2の手紙」になると、実は牧師自身も気づかず、彼の妻は見抜いていたほんとうの問題。彼による少女への恋愛、少女から彼への愛がしだいにあきらかになり、信仰の問題と重ねてどんな解決を選ぶのが人として正しいのか、混乱のなかでいっきに悲劇へと突き進んで終わってしまう。文学作品としての面白さここにあり。これはジッドの人生をモデルに作品化されているとのことだが、実際のジッドの人生の方がかなりたいへんだぞ。

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