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「王の没落」 イェンセン

読書
「王の没落」イェンセン 作
(岩波文庫)

16世紀激動のデンマーク。暴君クリスチャン2世に寄り添って生きた迷える傭兵ミッケル。ミッケルとはただならぬ因縁の軽佻浮薄な青年アクセル。しだいに衰える哀しき人生の物語。

作者は20世紀のノーベル賞作家。
文庫前説によると、この時代の北欧は分離併合を繰り返す戦乱の時代。しかしそういった大きな歴史は描かれず、移りゆく時代の中で主人公たちの迷いや暴力や人生の選択をたどっていく。スウェーデンを大量虐殺によって侵略したのち敗北したクリスチャン2世も、物語の後半になってようやく悲しい姿で多く登場する。

主人公ミッケルの若き時代から老いて死ぬまでが話の主軸である。やや投げやりなのか感情のまま行方定まらぬ人生だが、クリスチャン2世の運命が下り坂にかかる頃、ようやく王の側につく役割となる。
同じ傭兵仲間の青年アクセルは、受け継いだ秘宝の存在を誰にでも気軽に喋ってしまう浅慮な性格。女性に対しても移り気で無責任。当然かもしれないが彼の人生も悲惨な結果となった。そして力を失った凶王クリスチャン2世は、幽閉された城内で毎日を精一杯生きているのだった。
やはりこれは歴史小説ではなく、人生の哀しみを巧みに絵にした作品ではないだろうか。

外科医ザカリアスによる脳手術により、機能が拡張され膨れ上がった脳を持つ奇形児など、この発想はやはり現代文学だ。

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