漫画家まどの一哉ブログ
「人間の限界」 霜山徳爾
読書
「人間の限界」霜山徳爾 著
(岩波新書 1975年)
限りある人間の営みを、まなざし・歩み・漂白など様々な局面から、古今の名言を手掛かりに切り取った随想集。
著者霜山徳爾(1919-2009)は著名な臨床心理学者であり、フランクルの「夜と霧」の翻訳者でもあるが不明にして知らなかった。
本書は専門の臨床心理学の知見も活かしながら、必ず終わる人生の意味と限界を、手・足、立つこと・歩くこと、地平・蒼穹など、多様な条件下で問い直し最後の告別まで至る覚書である。
古今東西の典籍を引用しながらしだいに思いを深めていくが、とうぜん革新的な結論に達するわけではく、長い歴史の中で人間がなんとなく残してきた思いの輪郭をなぞるだけかもしれない。しかしそれもまたありだ。
次々と引用される過去の幅広い著作・名言の豊かさと美しさ。それらを組み込んで語られる一文の心地よさが格別で、心に沁みる名文だ。私が言うのもおこがましいが歴史に残る名随筆だと思う。
古い本だが読んでみないと分からない。
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