漫画家まどの一哉ブログ
「水晶内制度」 笙野頼子
読書
「水晶内制度」笙野頼子 作
(エトセトラブックス)
日本国内に独立する女だけの国「ウラミズモ」。原発と少女データを経済力として、したたかに生き延びるこの国で、新たに神話を書き起こす作家である私が見たものは?驚異のディストピア小説。
第1章はおなじみ作者独特の自由で諧謔味あふれるカオスな饒舌体で書かれており、いよいよ悪夢の始まり。何が起きているのかわくわくとする。
ところが第2章以降は一転、落ち着いた語り口となり、第3章にかけて女人国「ウラミズモ」の成り立ちを裏付けるための神話書き起こし作業が滔々と進行する。これが思いの外長く、もちろん作品自体がこの神話から成立しているのだが、ここまで精密な組み立てはなくても良い気がした。読めばそれなりに納得して読んでしまうが、ミーナ・イーザ(イザナミ)やオオクニヌシ(オオナンジ)とスクナヒコナの関係など、大きな枠組みだけ説明して貰えば充分だ。
それより男はごく少数奴隷的に飼われているだけであり、女は安心して暮らせるがレズビアンは禁止。分離派と一致派のペアのふた通りの暮らし方。鼻持ちならないエリート女子学生など、薄気味悪さ満載である。
ところで作中しばしば触れられる作家である私の、男性優位の文壇での実話に基づいた戦いだが、これはかの有名な1990年から2000年代前半にかけての純文学論争と当時の笙野の扱いをもとにしている。とはいっても現代日本文学にあまり興味がなく、文壇にも疎い自分はまったく知らなかった。また論争相手の大塚英志が属する人気漫画の世界も関心がなく、圧倒的に笙野作品の方がおもしろいと思う。
2003年センス・オブ・ジェンダー大賞受賞作品。
「水晶内制度」笙野頼子 作
(エトセトラブックス)
日本国内に独立する女だけの国「ウラミズモ」。原発と少女データを経済力として、したたかに生き延びるこの国で、新たに神話を書き起こす作家である私が見たものは?驚異のディストピア小説。
第1章はおなじみ作者独特の自由で諧謔味あふれるカオスな饒舌体で書かれており、いよいよ悪夢の始まり。何が起きているのかわくわくとする。
ところが第2章以降は一転、落ち着いた語り口となり、第3章にかけて女人国「ウラミズモ」の成り立ちを裏付けるための神話書き起こし作業が滔々と進行する。これが思いの外長く、もちろん作品自体がこの神話から成立しているのだが、ここまで精密な組み立てはなくても良い気がした。読めばそれなりに納得して読んでしまうが、ミーナ・イーザ(イザナミ)やオオクニヌシ(オオナンジ)とスクナヒコナの関係など、大きな枠組みだけ説明して貰えば充分だ。
それより男はごく少数奴隷的に飼われているだけであり、女は安心して暮らせるがレズビアンは禁止。分離派と一致派のペアのふた通りの暮らし方。鼻持ちならないエリート女子学生など、薄気味悪さ満載である。
ところで作中しばしば触れられる作家である私の、男性優位の文壇での実話に基づいた戦いだが、これはかの有名な1990年から2000年代前半にかけての純文学論争と当時の笙野の扱いをもとにしている。とはいっても現代日本文学にあまり興味がなく、文壇にも疎い自分はまったく知らなかった。また論争相手の大塚英志が属する人気漫画の世界も関心がなく、圧倒的に笙野作品の方がおもしろいと思う。
2003年センス・オブ・ジェンダー大賞受賞作品。
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