漫画家まどの一哉ブログ
「忘却についての一般論」 ジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザ
読書
「忘却についての一般論」
ジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザ 作
(白水社 EXLIBRIS)
「忘却についての一般論」
ジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザ 作
(白水社 EXLIBRIS)
1970年代アンゴラ独立闘争のさなか、密かにマンション内に身を隠し約30年を生き抜いた女性。内戦下で揺れ動く様々な人々の運命がしだいに彼女の運命と繋がってゆく。
主人公の女性はまったく部屋から出ないのだから、スタティックな小説かと思いきや、彼女の周りをめぐる役人やジャーナリスト・活動家などの動きが不穏で目が離せない。ひとつひとつの章が非常に短くここと思えばすぐあちらで出来事が起きるが、ストーリー全体は精緻に組み立てられており、いろんな人物の運命が時間が前後する中でみごとに結びついていく。
数奇な運命や謎解きが着想豊かでおもしろく、なぜ彼女は自閉的な性格となったか、足に恋文をつけた鳩は誰が飛ばしたかなど、全体を振り返ってみればややご都合主義かもしれないが、順不同で繰り出されると気にならない。閉ざされた部屋から見える外の世界と、その世界で現実に起きていることの落差が効果的だ。また彼女による詩篇も数篇挟まれており彩りを添える。
内戦自体を描いたものではないので、その悲惨さはあからさまには出てこないが、銃をとらない人々の生きていくためのやりくりが、次の出来事を生んでいく連鎖の妙味。解説にもあるとおりヒューマニスティック作品で、暴力はあるが心底悪いやつは出てこず、心温まる読後感となっている。
主人公の女性はまったく部屋から出ないのだから、スタティックな小説かと思いきや、彼女の周りをめぐる役人やジャーナリスト・活動家などの動きが不穏で目が離せない。ひとつひとつの章が非常に短くここと思えばすぐあちらで出来事が起きるが、ストーリー全体は精緻に組み立てられており、いろんな人物の運命が時間が前後する中でみごとに結びついていく。
数奇な運命や謎解きが着想豊かでおもしろく、なぜ彼女は自閉的な性格となったか、足に恋文をつけた鳩は誰が飛ばしたかなど、全体を振り返ってみればややご都合主義かもしれないが、順不同で繰り出されると気にならない。閉ざされた部屋から見える外の世界と、その世界で現実に起きていることの落差が効果的だ。また彼女による詩篇も数篇挟まれており彩りを添える。
内戦自体を描いたものではないので、その悲惨さはあからさまには出てこないが、銃をとらない人々の生きていくためのやりくりが、次の出来事を生んでいく連鎖の妙味。解説にもあるとおりヒューマニスティック作品で、暴力はあるが心底悪いやつは出てこず、心温まる読後感となっている。
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