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漫画家まどの一哉ブログ

   
「死んでいる」 ジム・クレイス
読書
「死んでいる」

ジム・クレイス 作


動物学者の夫婦が自分達の愛が始まった思い出の海岸に出向き、誰も来ないはずの人目につかない砂丘の影で愛を育んでいると、突然見知らぬ男に背後から花崗岩で頭を連打され、なにが起きたのか分からぬうちに死んでしまう。襲った男は単なる金目当ての暴漢だ。
砂漠に横たわる夫婦の死骸が日を追うごとにどんなふうに雨風や動植物などの自然に浸食され変化していくか、実に念入りに描写される。まさに「死んでいる」ことを描いた小説。それは殺された直後の体内物質の流れから始まっている。


この動物学者夫婦がいかにして出会うことになったか、若き日のこの海辺の街での合宿生活から語り起こされ、やがて出奔していった一人娘を持つ現在の生活まで、二人の感情のやりとりもたくさん語られるが、そこは自分の興味の対象外だ。


この学者の両親とはまるで違うタイプの一人娘が、行方不明になった両親を偶然出会った建築科の青年と探し始めることになり、市の死体安置室に行ったり、警察の実地検分があったりと、ミステリー風味のところは読み物としてのおもしろさがあった。


そんなわけでモザイクのように違った局面が組み合わさって出てくるので、たいくつだったり面白かったり交互に体験できる。

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