漫画家まどの一哉ブログ
「日本三文オペラ」 開高健
読書
「日本三文オペラ」 開高健 作
「日本三文オペラ」 開高健 作
つげ忠男さんが最も影響を受けたと語る小説。アパッチ族については小松左京を読んでいないし、梁石日の「夜を賭けて」も途中で挫折しているが、この作品は面白く読めた。
舞台の大阪砲兵工廠跡地は自分が子供の頃まだ残っていて、親に連れられて大阪環状線で京橋辺りを通るたびに、赤煉瓦のがれきとぼうぼうと生い茂った草原を見てここはなんやろか?と不思議に思っていた。
作品前半はほぼ自由に鉄くずを盗み出すアパッチ族の見事に構築されたシステムについて解説され個々の人物像は影が薄いが、後半警察の締め付けが厳しくなり、アパッチ族の暮らしもだんだんと困窮してくるにしたがって、猛者連のひとりひとりが活躍しはじめ、「無頼平野」の世界へ近づいてゆく。
開高健のその後のルポ活動などを見ても、やはり体の頑健な人間の近づける世界で、なにより胃腸および内臓が強くないと書けない小説だと感じた。
高度成長以前の日本社会の貧困とアウトローたちをつげ忠男さんは肌で知っている。とうてい自分などの想像が追いつくものではないが、この時期のちょっと社会的な小説は趣味に合う。
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