漫画家まどの一哉ブログ
「文盲」アゴタ・クリストフ自伝
「文盲」アゴタ・クリストフ自伝
アゴタ・クリストフ
(白水Uブックス・堀茂樹 訳)
本ばかり読んでいた幼い頃から、ハンガリー動乱期に乳飲み子を抱えて亡命。働きながら「悪道日記」を書くまでの波乱を描いた自伝。
自伝と言っても数行読み出すやいなや、大きなドラマを読んでいるようなダイナミズムを感じるのはなぜだろう。貧しい家で育ちながらも本を読むことに明け暮れているだけで、まだ何も起きてはいない。それでも語りには動きがあり、自伝文学と小説家クリストフはもう始まっている。
やがて若きクリストフ夫婦は赤ん坊を抱えてスイスへ亡命するが、この土地(スイス)で使われているフランス語が読めるようになるまでがたいへんだ。音が理解できても表記からはその音が思い浮かばない。労働者であったハンガリー人の作者が母語以外で作品を書くまでの苦労が大いに語られる。「文盲」とはフランス語が読めないという意である。
それにしてもスイスの時計工場で働きながら職場で提供される昼食が、ハンガリーのものとまるで違っていて一口も口にできないとは。同じヨーロッパとは言えそんなにも違うものかと驚いた。
ハンガリー始めソビエト政権下の東欧諸国の歴史について私は不勉強。
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