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「イエスに邂った女たち」 遠藤周作

「イエスに邂った女たち」
遠藤周作 著
(講談社文庫・1990年)

新約聖書に登場する数人のマリヤ。そのエピソードを描いた14点の名画図版をはさみながらイエスの足跡を追う。

イエスの教えが師匠ヨハネと違うところは、神を厳しい父のような存在ではなく、やさしく赦してくれる母として見ているところ。遠藤周作は新約の記述からより正確な事実であろうところを読み取って考えてゆく。
イエスの母マリアも最初は平凡な女性で、縁者ともどもイエスの振る舞いに困惑するが、しだいに我が息子を信じることとなる。

有名なマグダラのマリアも単なる尻軽な女ではなく、ほんとうに信頼できる男性を求める真剣で熱烈な重い女なのだ。男たちは薄情にも逃げ出したが、彼女はイエスの墓にまで付き添った。
ベタニアのマルタとマリア姉妹の逸話も二人の間で板挟みになり、どちらをも立てようとするイエスの計らいが面白い。遠藤周作の見立てはさすがに小説家ならではの人間味があって愉快だ。

それにしても父としての神ではなく、全てを赦してくれる母親としての神は、人間誰しも必要とするものかもしれない。なにしろその全てとは自分がやったこと、思ったことのみならず、無意識の領域まで含んだ完全に自分の全て。はっきり言って神が人間の妄想(ドーキンス)であっても、なぜ人はそんな超越した存在を必要とするのか、その気持ちはわかるというものだ。

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