漫画家まどの一哉ブログ
「庶民烈伝」 深沢七郎
読書
「庶民烈伝」 深沢七郎 作
「庶民烈伝」 深沢七郎 作
いかに庶民がすさまじいものであるかを描いた短編集。
小説家と言っても深沢七郎はギターを弾いたり、ラブミー農場を開いたり、今川焼を売ったり、まったくインテリ臭のする人ではないのだが、その深沢七郎から見ても庶民というのはびっくりするくらいすさまじいことをするものらしい。作家の常識が通用しない。
たとえば「お燈明の姉妹」の4姉妹は美人ぞろいだが、みな父親が違うというおおらかな性風俗で、好きなように生きている。「べえべえぶし」の善兵衛さんは、ヘリコプターで散布された消毒薬に疑いを持ち、わざわざ自分の田んぼでヘリコプターの真下に立って消毒液を吸い込んで確認し、それがためにあの世に行ってしまう。「サロメの十字架」だけが農村ではなく都会のホステス達の話で、かわいそうにママはオーナーによって首になってしまうのだが、どんな世界を書いても品があって楽しい文章。作者の人間を見る目の優しさが滲み出るよ。
巻頭序章に作者と近隣友人との、庶民とはいかようなものであるかについて茶話があるが、キリのない庶民比べのような内容で愉快愉快。
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