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「幻想の未来/文化への不満」 フロイト

「幻想の未来/文化への不満」
フロイト 著・中山元 訳
(光文社古典新訳文庫)

表題2作に加えて「モーセと一神教(抄)」フロイト晩年の代表的論文を収録。精神分析学の成果をもって宗教を批判、文化の成り立ちと問題を明らかにする。

恥ずかしながら少々聞き齧った程度しか知らないフロイト。20世紀の一般常識だったかもしれない。おそらく理解できていないだろうがさすがにおもしろかった。
「幻想の未来」で語られる、小児の寄るべなさが強い父親を求め長じては強い神を求めるという文脈で、この「寄るべなさ」という言い回しがまさにこの世に置かれた人間の心情を的確に表していて身に沁みる。自分など寄るべなくて常に不安だ。

それにしても人間の欲動(リビドー)というものはたいへんなものだ。世間を見ても欲動が人間を動かしているのはまぎれもなく実感できる。この欲動を昇華するかたちで文化・芸術が生まれるのであれば、昨今の一部野蛮な政治家やその支持者大衆がインテリを毛嫌いし、予算を削って文化をないがしろにしようとするのも納得できるというものだ。

モーセが一神教(唯一神)を作り出して、のちにユダヤ教がキリスト教に至った経緯を、幼い頃のトラウマから潜伏期を経て神経症が発露する精神分析の成果から説明するとは、なんとダイナミックな論考であろうか。それにしても幼い頃のトラウマに関して自分を省みるに、母親=世界であって過保護のためその分離ができず、そのまま大人になる経緯を失ったと思われ冷や汗が出る次第。

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