漫画家まどの一哉ブログ
「安岡章太郎戦争小説集成」 安岡章太郎
読書
「安岡章太郎戦争小説集成」
安岡章太郎 作
(中公文庫)
中編「遁走」他短編で構成された戦争しない戦記文学集。巻末に開高健との対談あり。
戦記文学もいろいろと読んでいるので、「遁走」もやはり軍隊の理不尽で不合理な精神主義や悲惨な戦場を描くものと思って読み始めると、しばらく読んでいるうちに全然違う印象に気づく。著者体験をもとに書かれたこの作品では主人公は戦闘に赴くこともなく入院してしまう。
したがって訓練と病棟での話になるわけだが、そもそも主人公に兵隊としての思い入れや覚悟はなく、ひたすら食べることに関心は集中する。食事と排泄、そして残飯処理や銃の手入れや身辺の世話。実践モードに入っていないのでまわりの兵士も緊迫感がなく、戦争そのものという大きな話がひとまず脇に置かれている状態。この状態で起きるエピソードの連続がまことに面白く、やはりこれが安岡章太郎の持ち味なのか、他の戦記文学にはない味わいとなっている。
もちろん基本的には国家と社会の問題があるのだろうけど、あくまで動物としての肉体にこだわっているところが新鮮だ。
無作為に集められた人間集団に、絶対的なタテ関係の法則が嵌められていると、どうしても奇妙で滑稽な事件が連続してしまう。これも人間社会の悲しい一局面であるということかな。
「安岡章太郎戦争小説集成」
安岡章太郎 作
(中公文庫)
中編「遁走」他短編で構成された戦争しない戦記文学集。巻末に開高健との対談あり。
戦記文学もいろいろと読んでいるので、「遁走」もやはり軍隊の理不尽で不合理な精神主義や悲惨な戦場を描くものと思って読み始めると、しばらく読んでいるうちに全然違う印象に気づく。著者体験をもとに書かれたこの作品では主人公は戦闘に赴くこともなく入院してしまう。
したがって訓練と病棟での話になるわけだが、そもそも主人公に兵隊としての思い入れや覚悟はなく、ひたすら食べることに関心は集中する。食事と排泄、そして残飯処理や銃の手入れや身辺の世話。実践モードに入っていないのでまわりの兵士も緊迫感がなく、戦争そのものという大きな話がひとまず脇に置かれている状態。この状態で起きるエピソードの連続がまことに面白く、やはりこれが安岡章太郎の持ち味なのか、他の戦記文学にはない味わいとなっている。
もちろん基本的には国家と社会の問題があるのだろうけど、あくまで動物としての肉体にこだわっているところが新鮮だ。
無作為に集められた人間集団に、絶対的なタテ関係の法則が嵌められていると、どうしても奇妙で滑稽な事件が連続してしまう。これも人間社会の悲しい一局面であるということかな。
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