漫画家まどの一哉ブログ
「境界なき土地」ドノソ
読書
「境界なき土地」 ホセ・ドノソ 作
ドノソを読むのはこれまでに2回失敗しているが、これはよかった。いわゆるマジックリアリズムやグロテスクリアリズムの作風というより、丁寧に書かれたふつうの人間ドラマだった。滅びようとしている小村の売春宿が舞台で、主人公がオカマの中年ダンサーだというところが野次馬的な好奇心をそそるが、当然オカマだって普通の人間なんだから、彼(彼女)の葛藤やふるまいをそれだけで奇行とは呼べまい。
彼は売春宿兼酒場でダンサーとして働くが、結局はオカマゆえに男達にからかわれ暴力を受ける人生。彼の娘は店の売上をせっせと貯金し、どうしても滅びゆく村と店を捨てようとしない絶望とともに生きる女。そしてトラックだけを頼りになんとかボスの支配から逃れようとする野蛮な男。
電気が通って発展していくはずの村だったが、結局そうは行かずボスたる政治家の思い通りに土地が買い占められようとしている。たった一人のボスだけが支配する村の小さな経済。それだけが唯一の政治でもあるといった状況。洋の東西を問わずこれが地方の小村というものなのか、行き止まりの社会と行き止まりの人生がある。
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