漫画家まどの一哉ブログ
「僕はどうやってバカになったか」
読書
「僕はどうやってバカになったか」 マルタン・パージュ 作
愉快愉快。つねづね多様な学問研究に頭を使い、もっぱら思索にふけって毎日を過ごしてきた主人公は、ある日気付く。知性に縛られて生きるより、バカであるほうがはるかに楽しい。
先ず手始めにアル中になることを目指し、酔っぱらいの指南も受けたが、ビール半分で病院に担ぎ込まれる始末。その次に自殺講座の受講生となったが、自殺方法を学習するや嫌気がさしてしまう。やがて彼は精神分析医に相談に行き、ウーロザックという安定剤の処方を受け、結果人格改造に成功。 大学講師の仕事に辞表を出し、精神を刺激する大量の本を処分。アジアの労働力を搾取する多国籍企業の商品を買わないことやエコロジストであろうとする事を放棄し、初めてマクドナルドを使い、ナイキやアディダスを身に着け、ゲームセンターへ浸るのだった。知り合いの伝手でブローカー会社の社員となった彼は、キーボードにコーヒーをこぼす失敗の結果、とほうもない大儲けの取引に成功し、一躍大金を入手。免許もないのに外車を買い、スポーツジムで肉体を鍛え上げ、とうとうかなりひどいバカになることに成功したが…。
ここで主人公が行っていることは、あらゆる凡人にとってフツーの、いや憧れのライフスタイルだが、少しでも知性や精神性とよばれる怪しげなものを抱えている人間には、身に覚えのあるいささか恥ずかしいおかしさがある。知性ひとすじも確かにバカだが、はたしてこの人格改造は幸福なのか?我々は所詮二股かけて歩いている。
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