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漫画家まどの一哉ブログ

   
「侍女の物語」 マーガレット・アトウッド
読書
「侍女の物語」
マーガレット・アトウッド 作
(ハヤカワepi文庫)

キリスト教原理主義者に乗っ取られたアメリカ。女性は全ての人格を奪われ、主人公は子孫を残すための機械としてある屋敷に配属される。果たして逃亡は可能なのか?恐怖のディストピア小説。

近未来SFの分類に入るかもしれないが、長編でありながらストーリー展開で読ませるものではなく、時系列も組み換えながら暗黒世界の様子をひとつひとつ丁寧に描いてゆく。
女性は名前を奪われ男性の付属品としての呼び名が与えられる。本を読むことも文章を書くことも禁止。その女性の中にもカーストがあり、地域の支配人男性の屋敷を統括する妻、そして支配人の子を産むための侍女、下働きの便利女、女たちを教育する小母。などである。

この女性に対する差別的・非人間的な扱いは、SF的な発想を用意しなくてもごく身近な現代社会から容易に類推できるものなので、遊び抜きのリアリティがあり、絶望感がただならない。
密かに進む反体制的な動きがスリリングな興奮と緊張を増してゆくが、一気にストーリーが動き出すといった仕掛けはなく、そこが作品全体の凄みとなっている。

オーウェル「1984年」、ハクスリー「すばらしい新世界」、ザミャーチン「われら」(そして先日読んだ笙野頼子「水晶内制度」も)。まだまだ私が知らないだけで、ディストピア小説の名作というものがあるものだ。

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