漫画家まどの一哉ブログ
「ロレンス幻視譚集」 D.H.ロレンス
読書
「ロレンス幻視譚集」 D.H.ロレンス 作
「ロレンス幻視譚集」 D.H.ロレンス 作
「チャタレー夫人の恋人」(未読)で有名なロレンスの幻想短編集。
サービス精神旺盛な作風で読みやすく痛快。登場人物も実に大衆的だ。作品によっては詩的な言葉は使っているが過度に観念的であったりはしない。
「人生の夢」:水晶屈で昼寝してたら知らない間に時間が流れ、気がつけば遠い未来世界にというSF作品。この未来社会がオーガニックでピースフルなのだが、全員眠っているかのように穏やか過ぎて、なんとも不気味。
「喜びの幽霊」:さるお屋敷に亡妻の監視を恐れて生きている大佐が寄宿していて、その家のばあさんは心霊主義に凝り固まっている。世帯主の息子夫婦のダンナの方も品行方正だが精神的には金縛りに合っているような状態。そこへ泊まり込んだ主人公が大佐の悩みを解決してくれるといったお話。この主人公がけっこうさっぱりした男なので話がおもしろくなっている。セリフも誰にでも分かる内容で上品な通俗小説といった趣だ。
「島を愛した男」:なんとか小金を貯めて念願の島のオーナーとなり、農場を作り牛も飼い人手も雇って、都会を離れた自然と親しむ生活を実現した。ところが使用人はちっとも彼に懐かず裏切りや災難が続く。島を替えたが、こんどは住み込みの女と結婚するハメになってしまう。理想を失った男は、女を捨てて雪降る北の離島での孤独な暮らしを選んだ。リアリズムに負けて、だんだんと人間嫌いになっていく様が凄まじい。
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