漫画家まどの一哉ブログ
「タイガーズ・ワイフ」 テア・オブレヒト
読書
「タイガーズ・ワイフ」 テア・オブレヒト 作
内戦の様相が深まり、いよいよ国家分裂へと向かうユーゴスラビア。とうとう首都へも空爆が始まる頃、若き医師ナタリアはボランティアで子供達に予防接種活動を行う。まだまだ近代医学よりも迷信を重んじる人々。村に病気や災いが起きるのは、供養してやれない遺骨がブドウ畑に埋まったままだからと信じ、病気の子どもまで駆り出して村総出で畑を掘り返しているのだ。
「タイガーズ・ワイフ」 テア・オブレヒト 作
内戦の様相が深まり、いよいよ国家分裂へと向かうユーゴスラビア。とうとう首都へも空爆が始まる頃、若き医師ナタリアはボランティアで子供達に予防接種活動を行う。まだまだ近代医学よりも迷信を重んじる人々。村に病気や災いが起きるのは、供養してやれない遺骨がブドウ畑に埋まったままだからと信じ、病気の子どもまで駆り出して村総出で畑を掘り返しているのだ。
このナタリアの周りで起きる出来事と、同じく医師である彼女の祖父のエピソードが行きつ戻りつして物語が進む。
祖父が少年時に体験した、動物園から逃げ出して山里に住み着くようになったトラと、虐待されたろうあの少女の不思議な交流。そして青年医師時代に出会った、死者を導く役割をする不死身の男。この男は埋葬された棺桶の中からよみがえり、足に錘をつけて水中に投げ込んでも死なない。時間を越えて生きている。
老若2人の医師が、戦争で激変する社会と、根強く生き延びる伝統的で不条理な世界を同時に体験して生きて行く。土臭くて夢幻的な幻想文学の一級品。
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