漫画家まどの一哉ブログ
「コンビニ人間」 村田沙耶香
読書
「コンビニ人間」村田沙耶香 作
(文春文庫)
生まれつき自然な人間の感情を欠いている彼女は、コンビニ店員となることによってのみ、人間社会の仲間入りができるのだった。人格障害者の日常を描いた恐ろしい小説。
素人なので軽々しくは言えないが、ある種の人格障害・情性欠如型の人間が、ふつうの人間と思われるためにコンビニに身も心も捧げてしまう恐ろしい人生。彼女の情動・情緒はすべて周りの人間の口調やクセの模倣であり、本心は乾いた合理的なものでしかない。
彼女は自分の性格に悩むでもなく、これが自然だとばかりに部屋に男を飼ったりする。通俗小説の部類であればサイコパスの主人公が粛々と犯罪を犯す過程を描くところだが、全く違うこんなかたちで感情が欠落した人間の生きて行く様子を書けるとは、身も凍るような文学世界だ。
ほんとうの人格障害ではないにしても、子供の頃から「みんながなんで笑っているかよくわからない」「放っておけば一人でずっと絵を描いている」「人の言葉の背後には気持ちというものがあることを大人になってから知る」などという傾向のある自分のような者には他人事でない。冷や汗が出る思いで読んだ。
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