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漫画家まどの一哉ブログ

   
「青い野を歩く」 クレア・キーガン 
読書
「青い野を歩く」 クレア・キーガン 作


アイルランドの果て。森もなく、断崖と泥炭でできた土地に暮らす話が心地よい。火をおこす、食事を作る、風呂に入る、など生活のもろもろを読むだけでなんとなく楽しいのは、それがけっして大切にされているわけではなく、むしろぞんざいないいかげんなやり方でなされているせいであろう。人生自体もどこか投げやりで、あまり深く考えてそうしているわけではない、その場しのぎのようなものとして描かれているところがよい。ある女が結婚してまた去って行くまでの月日をたんたんと描くのがよい。


「森番の娘」:ダンスホールの踊り子だったマーサが農夫ディーガンの求婚を受け入れたのも、年齢的なことを考えて最後のチャンスかもと思ったからだが、嫁いでみると大農家のはずの家はオンボロだった。そうして生まれた3人の子どものうち娘だけは実は不倫の結果だ。後悔から始まったマーサの妻として母としての人生が煮え切らないまま続いていくが、その内面を細かく描くのではなく、家庭に起ったことが順番にどんどん描かれて話が進むのだ。この大掴みな人生の描写がひとつの達観のようで気持ちがよい。途中拾われてきた犬目線で話が進んで行くのが愉快。


「クイックン・ツリーの夜」:木も生えない寒風吹き荒む泥炭の土地。死んだ神父の後に越してきたマーガレットは外でおしっこする迷信深い女。2軒屋の隣に住む男スタックは雌山羊のジョセフィーンと暮らしていて、ベッドで寝るときも山羊と一緒だ。その山羊の代わりに遂にマーガレットと暮らすことになり、2軒屋の間の壁はぶち抜かれたが、マーガレットはしだいに村人の病気を治す魔力を増幅していく。都市生活とは無縁の人生がおもしろい。

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