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漫画家まどの一哉ブログ

   
「聖なる酔っぱらいの伝説」 ヨーゼフ・ロート
読書
「聖なる酔っぱらいの伝説」
ヨーゼフ・ロート 作


訳文ではあるけど、ロートの文体はさっぱりしていて、テンポもよく軽快な感じだ。
「四月、ある愛の物語」:主人公の男はアンナという女性となんとなく同棲しながら、郵便局長の家にいる窓辺の少女に惚れ込んでしまい、アンナは平然とそのことを告げられる。
「ファルメライヤー駅長」:田舎の駅長は現在平和な家庭を築いているにもかかわらず、列車事故で助けたロシアの伯爵夫人に心を奪われ、家族を顧みることなく半生を伯爵夫人の後を追うことに費やす。いずれの話もなんとも自分に正直で、うしろめたさのかけらもないことに驚いてしまう。
「皇帝の胸像」:解体された旧オーストリア帝国の事情を知らないで読むわけだが、作中主人公の老いた伯爵は愛国心の名のもとに野蛮化する民族主義を嘆いている。皇帝の栄誉はおくとしても、各民族の自立に疑問符をなげかけるユダヤ人作家の視点は、現在汲むべきところ大いにあり。
「聖なる酔っぱらいの伝説」:寓意小説。住居を持たず河川敷で暮らしていた男に神の恵みか、次々と不思議な偶然がお金をもたらしてくれる。ただしミサのある日に教会で小さな聖女テレーズさまにお返ししなくてはならない約束。最後はちょっと涙するおはなし。手塚治虫でも喜んで描きそうだが、デフォルメしてしまうだろう。

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