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漫画家まどの一哉ブログ

   
「理不尽ゲーム」 サーシャ・フィリペンコ

読書
「理不尽ゲーム」サーシャ・フィリペンコ 作
(集英社)

事故により植物人間となり回復不可能と診断された青年ツィスク。10年に及ぶ祖母の献身的な看病の末、奇跡的に目をさますが、そこで彼が見たものは独裁国家ベラルーシの恐ろしい現実だった。

音楽学校に通いながらチェロ演奏家を目指す彼はほぼ落第生。そうこうしてるうち地下鉄での群衆将棋倒し事故に巻き込まれて昏睡状態となる。ここまでの社会の描写ですでにベラルーシが民主化とは逆方向に少しづつ動いている様子がわかる。

その後物語の半分あたりまで彼は植物状態で、いつになったら覚醒するのかもどかしい思いだが、たった一人病室へ通うおばあちゃんの献身的な働きが感動的だ。
そしてついに奇跡の覚醒。しかしベラルーシは現在も進行するルカシェンコ大統領の独裁国家が完成されており、3%の支持率でも軍と警察を掌握している限り、恐怖政治は揺るぎないのだった。

セリフが生き生きとして、人物が皆等身大で生きている実感が伝わって来る。社会派小説といった風情はまるでなくて、青春小説のような味わい。
起きている現実は絶望的で、社会は止まったままだが、それでも個々の人生は進まざるをえない。果たして未来があるのかどうかもわからない悲しい人生がつらい。

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