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「妻を帽子とまちがえた男」 オリヴァー・サックス

読書
「妻を帽子とまちがえた男」オリヴァー・サックス 著
(ハヤカワノンフィクション文庫)

脳神経科学者が出会った驚きの患者たち。その症状を喪失・過剰・移行・純真のキーワードで読み解いていく。脳の障害から見える人間を形成しているものは何なのか?温かみ溢れる科学エッセイの傑作。

ここには直近の記憶を失ってしまう人が出てくるが、書かれている通りもし記憶というものがなかったら、人は自分の人生の移り行きを意識できるだろうか。また半身の体の感覚を無くした人を見ても思うが、もし体からのフィードバックが全く無ければ自分が存在している確信をどうやって得るのだろうか。
表題「妻を帽子とまちがえた男」は右脳に障害を受けて、物の姿形は正確に把握できるが、それが何でどういう役割を持つものか分からなくなった人の話だが、我々と我々を含む世界は脳の絶妙な働きで、さもあたりまえのように成立しているらしい。

側頭葉発作によって脳内に起こる非常にリアルな追想や音楽は、わずらわしいものもあるが、人生に喜びをもたらすものもある。刺激される側頭葉の箇所によって、発現する幻想の種類が特定できるのも、なんだかさみしいような気がする。

知的障害とされる人々の天才的な画力や記憶力はしばしば耳にするが、こればかりは脳神経のどういう作用によるのかわからない。最近もそういう女性が話題になったが、素数が螺旋系のピラミッドのごとく繋がって見える人がいるのは、数というもに対する我々の認識からはるか彼方の世界だ。

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