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漫画家まどの一哉ブログ

   
「激流(上)」 高見 順

「激流(上)」
高見 順 作
P+D BOOKS(小学館)

大正時代、東京日本橋のメリヤス問屋に生まれた兄弟。兄進一はひ弱であまり人と打ち解けない秀才。弟正二は体格も良く元気で誰とでも話せるが考えることを好まない。対照的な二人の時代に翻弄される運命を描く。

社会派小説ではあるのだが、前半はもっぱら少年から大人へと成長する兄弟と女性との交流が描かれる。登場する女性が気も強くモダンガールといっても平凡な人生観で、いかに裕福で安定した男を捕まえるかに終始する。無理もないがつまらない。学生時代に左翼思想に触れた長男進一はいよいよ身を徹して(恋愛を捨てて)マルクス主義運動に没入する。

彼は非合法共産党の地下組織として身を隠しながら、工場の労働運動を指導するが、このあたりからいよいよスリリングな筋立てとなり目が離せない。党本部からはあくまで反天皇制・反社会民主主義をスローガン(32年テーぜ)に労働運動を指導するよう指示がくるが、進一はそれではせっかくの戦争反対・待遇改善でまとまっている工場労働組合が離れてしまうと危惧する。いわゆる労農派的な視点なのか、読んでいると尤もだなと思う。

やがて罠にかかって捕まってしまう進一。特高警察の過激な拷問にも口を破らず1週間耐え抜いて起訴猶予となるが、正義のため自身のプチブル的人生を捨ててしまう覚悟はどこからくるのか。治安維持法違反で検挙された著者高見 順の経験を活かした獄中描写がリアルだ。

弟正二は元々は快活な性格だがけっこうシニカルな態度・人生観で、全てにおいて一歩身を引いている。まわりに女性も多くいるが常に愛するところまでの興味を持たない。女性からは夢がない男だといわれる。
そんな彼も入営する。兵隊となることも仕方がない、逃れられないことは考えずに徹底するしかないというポジションだ。国のためだとも考えない。そんな彼が入隊した部隊は、なんと2.26事件の主力部隊であった。以下後編へ。

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