漫画家まどの一哉ブログ
「唐宋伝奇集」上
「唐宋伝奇集」上
(岩波文庫・今村与志雄 訳)
いつの間にやら夢の中へ。絶世の美女と知り合い、やがて気がついてみると…。志を持つも人は弱いものである。
浦島太朗伝説のような異世界で見た幸福の行く末。また誓い合った男女でも一度離れると心は変わってしまう現実。人間の本質に対するペシミズムが背景にある。
「妖女任氏の物語」沈 既済:任氏は妖女で荒地を屋敷に見せかけて若い男を誘惑して遊ぶが、貧しく身分の低い鄭六には何かと情けをかける。しかし所詮人間ではないので猟犬に襲われてあわれにも死んでしまう。妖女(けだもの)といっても人間以上の節義と感情があったのだ。男をたぶらかすような卑しい立場のしたたかな女でも実は善良なところがある。という話は他にもある。
「南柯の一夢」李 公佐:軒下に寝ていると国王の使いが馬車で迎えに来る。王国に暮らし美しい妻を娶り、官職に就き地方を治め、賊軍と戦い、やがて目が覚めるともとの軒下に。庭木の根本を調べてみると、大きな蟻の巣が張り巡らされていて、それは自分が夢に見た王国の姿であった。単なる夢ではなくアリの巣にいたという裏付けがあるのが面白い。
「鳴珂曲の美女」白 行簡:群を抜いた秀才である若者は前途洋々と都に出たが、娼婦李娃の虜になってしまい親からもらった全生活費を蕩尽してしまう。やがて李娃にも見放され乞食となるが、李娃は心変わりし、元来秀才であった彼を本来の道へと導くのであった。天下の逸材も女に惚れ込むやいなや出世も忘れて金を使い果たす、その極端さ。しかしそんなこともあるだろう。
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