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漫画家まどの一哉ブログ

   
「出身国」ドミトリィ・バーキン 
読書
「出身国」
ドミトリィ・バーキン
 作

1964年生まれの謎のロシア人作家短編集。デモーニッシュなイメージが横溢する文体。暴走する詩的観念。言葉の魔力にゾクゾクとする。

「荒廃は石にさえ浸透して壁に宿ったのだが、その壁にこそ極限の孤独と残酷な時間の流れによって孵化した妻の愛が、音もなく赤々と燃えているのだった。」
「ついに倒れこんだ男の唇が無慈悲で無関心な大地に触れると、脳に黒い花が咲いた。」
「ペトラーギンをいついかなるときも支配していたのは、息をひそめ、混濁した歳月の奔流から一歩離れていたいという思いとーーその時間の奔流に飲まれた人々は、泥濘、折れた枝、擦りきれた服、ひん曲がった銃、水に洗われて角がとれた骨といった物体に遮られながらも、理想を追い求めてひたすらに疾走していくのだーー産声をあげた瞬間から頭に落ちてくる法の影を欺いて、息をひそめ一歩離れて立ち、人々に助言を与えてやりたいという思いだった。」
「ペトラーギンがボイラー室に入ってきたとき、大きな鼻と万力のように閉められた唇と、草を咀嚼する雄牛のように突きでた力強い顎をした男の顔は、炭と煤の粉が固まってできた外皮が、額や頬や唇の筋肉神経を鍛接してしまったかのように微動だにしなかった。」

などなど…もとよりどこから来たとも知れぬ風来が村に住み着いて働き始める設定が幻想文学の雰囲気を醸し出していて、現実から遊離したもうひとつの現実を十分に味わうことができる。とはいっても、そこまでイメージ中心の作品ばかりではなく、素直に物語が進んで行くものもあるが、いずれも幸福とは程遠い底辺をのたうちまわるような話だ。主人公の男たちは流れ者だったり、一兵卒だったり、頑固親父だったりするのだが、自己中心的で他者とは容易に相容れぬ性格でありながら日々忠実に働いている。そしてこの作者もふだんはトラック運転手として忙しく、小説など書くヒマがないそうだ。

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