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漫画家まどの一哉ブログ

   
「雲の影/貧乏の説」

読書
「雲の影/貧乏の説」 幸田露伴
 著


露伴のエッセイ集。少年時代のことや、釣りのこと。世情のことや、もちろん文学のこと。どれも案外素直な内容でそんなに驚く程の洞察はないが、雰囲気を楽しむことができる。


露伴は1867年(慶応3年)に生まれて1947年(昭和22年)に死んだ人で、さすがにまだまだ江戸文化の香りが残っている時代に育っただけあって、江戸文学の語り方が歴史学者のそれではない。三馬を語り京伝を語り、近松を語り一九を語るが、自分が作家として彼らに繋がっている感覚を自然と持っていた気がする。江戸時代後期に親しまれてきたものは、やはり露伴が若いころも引き続き大衆にとっても定番の娯楽作品だったはずで、その辺りのリアルさが江戸期の作品について近しく語られる所以であろう。


(ところで話はそれるが、考えてみれば露伴と同時代の尾崎紅葉「金色夜叉」、泉鏡花「婦系図」あるいは後の新国劇の「国定忠次」や「月形半平太」など、現代でも私の親の世代までは日本人共有のネタというものがあったものだ。今残るは「忠臣蔵」くらいか。)


さて漢学はこの時代の共有知であって、露伴のこのエッセイ集でも「簡素治新」など手慣れたものである。曰く「簡」はこう也、曰く「素」はどう也。ところがしばしば自分はこの種の道を説く漢学というものに上滑りを感じてしまい、なにか言葉の辻褄を合わせることに傾いていて、きれいごとに終始している気がするのは、こちらに素養がないためでありましょうか。


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