漫画家まどの一哉ブログ
「離れがたき二人」 シモーヌ・ド・ボーヴォワール
読書
「離れがたき二人」
シモーヌ・ド・ボーヴォワール 作
(早川書房)
女性に対してのしかかる伝統的カトリックブルジョア階級の桎梏。唯一無二の友人と生き抜いた若き日の実体験をもとに書かれた未発表作。
友人アンドレ(女性)に対する母親の縛りがあまりに強く、全く自由がない生活に呆然とする。女の人生というものが初めから設計されていて、母から娘へと頑なに生活の些事から結婚に至るまで踏襲されなければならない。
これは違うかもしれないが、母親は自分が儘ならない人生を歩んできた以上、娘にもそれを強要し、娘が自由に生きることを許さない。自分より上の人生を歩むのを引きずり降ろそうとする。これは嫉妬がその理由でしばしばあることと思う。
さてアンドレが恋い焦がれる男性パスカルも、自分のほうから老いた父親の願いを忖度して、婚約を希望するアンドレの思いを伝えようともしない。どちらも自分の人生は親の意思最優先である。これが伝統的な上流カトリック家庭の慣わしなのか。
それにしても何もかもが人格神との対立として把握される考え方に、どうしても不自然なものを感じてしまう。超越的なものに意思がありすぎる。これがキリスト教だと言われればそうなのだが、事態がいたずらに過激なっているような気がしてならない。
伝統的カトリックブルジョア階級の女性に他する抑圧。没落した家庭からスタートし、無神論者でもあるボーヴォワールであればこそ、この問題に気づくことができた。
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