漫画家まどの一哉ブログ
「詩とは何か」 吉増剛造
読書
「詩とは何か」吉増剛造 著
(講談社現代新書)
過去の鍵となる詩人の作品から詩の姿を見つけるとともに、著者自身の詩作をふりかえって、詩の生れ出る瞬間に肉薄する、迫真の口述筆記。
詩魂もなく著者の作品にも不案内な私だが、めずらしい読書体験を得た。
前半では詩の「様々な姿について」、ディラン・トマスやエミリー・ディキンソン、パウル・ツェラン、吉本隆明、石牟礼道子、啄木、透谷など。知らなかった作家も含めて魅力的に紹介され楽しい。
ところが後半「詩の持つ力とは何か」になると、著者独自の詩作過程、いかにして詩が立ち上がってくるかが語られ、それが音でもあり画像でもあり、はっきりとした形をとる以前のイメージそのものが明らかにされ驚いてしまう。
詩人はみんなそうではないだろうが、墨筆や鏨で紙に物理的痕跡を作って原稿用紙とするところから始まり、極めて微妙ななにもないところから芽生える原初の感覚を見つける。その類まれな創作術が理解できるかといえばそうではないが、なんとなくわかる。いや、やっぱりわからない。
これは多分に口述筆記だからこそ語り得た世界で、整理しすぎない文章だからこその著述だ。自分には歯が立たない。
PR