漫画家まどの一哉ブログ
「転△生」甲野酉漫画全集1
読書
「転△生」 甲野酉漫画全集1
「転△生」 甲野酉漫画全集1
甲野酉作品はそのおとなしい地味な表現ゆえに、ひょっとして私漫画のような文学的な世界を予想すると違うのである。いかにも漫画ならではの面白さで構成された短編ばかりで、幻想的で奇怪な事件が起り、解決されないままさらにエスカレートして終わるといった作風。わかりやすい漫画的記号によるデフォルメやキャラクターデザインがなくても、漫画ならではの楽しさを得ることは可能なことが解る。「受験霊」「ある病院にて」など、とぼけた妖怪や精霊が出てくる話が愉しい。
学校という空間は、人間関係の距離の取り方や社会の中での自身のポジショニングなどを、露骨なカタチで浮かび上がらせるところだからだろうか。甲野酉作品には学園ものが多い(学園ものという言い方で想像されるモノとはかなり違うけれども)。作者は社会と独特な距離感を持っていて、まるで自分が仮面をつけた存在であるかの如く、自身をも社会をも客観視している。この立場から見た世界が活きてくるのが学校という題材なのかもしれないが、ほんとうのところはよくわからない。
ところで学園漫画は教室の机・椅子を正確なパースで描くのが面倒そうですが、教室という設定を最初に解らせてしまえば、あとはほとんど背景がなくても全く不自由しないことに気付きました。
購入はnisinosorao@yahoo.co.jpまで
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