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漫画家まどの一哉ブログ

   
「街と村」
読書(mixi過去日記より)
「街と村」
伊藤整
 作

作者とおぼしき主人公が、出身地である街(小樽)と村へ帰り、宛もなく彷徨いながら数々の亡霊に翻弄される幻想小説。その亡霊とは宙を舞う小林多喜二、また自分が過去に弄んだ女たちであったりする。自分が裏切った恋人や友人達が次々と現れ、かつての行為を責められ続ける。

主人公の私はやがて村に入り、泥棒の汚名をきせられ、地獄へ堕ちて畜生と化し、その実、行路病者として葬られるという、全編自責で埋め尽くされた小説。だが、幻想小説として、なまのリアリズム以外の方法で描かれているため、息苦しさは感じられない。

自分がいかに不誠実で、利己的で、ひどい人間であるかを露悪的にまで描くのは、日本近代小説によくあるスタイル。ボクは伝統的な私小説も楽しんで読むが、そういった自責的な部分はほとんど気にしていない。自責も苦悩も不幸も、発表された時点で、自己愛と自慢であることに変わりはないから真に受けない。ボクの場合、私小説の面白さはそういった自責部分ではないことが多い。この作品は幻想性がふんだんに展開されていて、たのしいです。


百になるまで
にゃんこの声
聞きたぐねえ
ざっくらん
ざっくらん

これはねずみたちが、金銀宝石を川で洗っているシーンでの歌。
このあと主人公は猫のふりをして、この財宝を盗み出し逃走するも、角ごとでお地蔵さんに会う度に重さが増して、手放してしまいます。ふふふ。

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