漫画家まどの一哉ブログ
「脳天壊了」(吉田知子選集1)
読書
「脳天壊了」(吉田知子選集1)
吉田知子 作
文庫本で読んだ「お供え」を含む作品集。地方都市を舞台としたやや泥臭いシュールレアリスムばかりかと思ったらさにあらず。いたって真面目な、やがて悲惨な現代文学である。幻想味は含むもののふしぎなことは起きないものもある。ただいずれの作品も心晴れぬというか出口なく燻った感じで、先が開けるような終着点はなく、戸惑いのまま終わるのはやはり不条理文学の感触があっておもしろい。
「脳天壊了」(吉田知子選集1)
吉田知子 作
文庫本で読んだ「お供え」を含む作品集。地方都市を舞台としたやや泥臭いシュールレアリスムばかりかと思ったらさにあらず。いたって真面目な、やがて悲惨な現代文学である。幻想味は含むもののふしぎなことは起きないものもある。ただいずれの作品も心晴れぬというか出口なく燻った感じで、先が開けるような終着点はなく、戸惑いのまま終わるのはやはり不条理文学の感触があっておもしろい。
表題作「脳天壊了」主人公は人生の長きにわたってある人物のゆるやかな支配下にあり、パワハラを受けながらも相手の男から離れて生きることができない。「乞食谷」も圧倒的な貧困女子でありながら、積極的に周囲と馴染んで向上していこうとする気配はまったくない。いずれも主人公は惨めな虐げられた立場にあり、なんとも重苦しい心晴れやかならぬ状況である。「乞食谷」は、そこにありえない不可思議な条件が加わって現実味が揺らいでいくところが作者の持ち味であるように思う。
「常寒山」は怪奇小説アンソロジーに入っていてもおかしくない不気味な話だ。いるはずのない妻の視線が山へ登った夫の遭難を追いかけているのだから。
「ニュージーランド」は、ニュージーランドへ向かうはずの船に乗っていながら、なぜか進んでいる様子がない。この話がいちばん自分好みのシュールレアリスムだった。
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