漫画家まどの一哉ブログ
「聖愚者ラヴル」 ヴォドラスキン
読書
「聖愚者ラヴル」
エヴゲーニー・ヴォドラスキン 作
15世紀ロシア北西部。墓地の傍の家で薬草と医術の技を祖父から受け継いだ若き医師アルセーニー。ペスト禍を逃れてきた娘を密かに伴侶とするも、出産の過程で母子とも亡くしてしまい、その贖罪の人生を歩む。しだいに医師としての名声は上がるが、栄達と安住を捨てエルサレムへ巡礼の旅に出発。やがて村に戻った彼は老いて聖愚者となる。
れっきとした現代文学であるが中世を舞台としているせいもあって、すこぶるオーソドックスな古典的名作のような味わいがある。聖愚者とは乞食僧のような良寛さんのような存在だが、主人公は子供の頃から浮世離れしていて、利己心が無く信仰篤く人々に尽くそうとする人格。平凡なわれわれの人生とはまるで違うが、あまりに純粋な生き方に思わず感情移入してしまう。
旅の途中では悪人も多く登場し、ストーリーも起伏に富んだものになっていて飽きさせない。共に旅する友人は預言者でしばしば現代社会の夢を見て、未来から自分たちの行く末をふりかえる。パン屋の目の前で盗んだパンを村人にこぼしながら分け与える他の聖愚者も愉快。モスクワはるか北のベロゼルスクからリトアニア、ポーランド、アルプスを抜けて地中海への旅も壮大で心踊る冒険譚でもある。
「聖愚者ラヴル」
エヴゲーニー・ヴォドラスキン 作
15世紀ロシア北西部。墓地の傍の家で薬草と医術の技を祖父から受け継いだ若き医師アルセーニー。ペスト禍を逃れてきた娘を密かに伴侶とするも、出産の過程で母子とも亡くしてしまい、その贖罪の人生を歩む。しだいに医師としての名声は上がるが、栄達と安住を捨てエルサレムへ巡礼の旅に出発。やがて村に戻った彼は老いて聖愚者となる。
れっきとした現代文学であるが中世を舞台としているせいもあって、すこぶるオーソドックスな古典的名作のような味わいがある。聖愚者とは乞食僧のような良寛さんのような存在だが、主人公は子供の頃から浮世離れしていて、利己心が無く信仰篤く人々に尽くそうとする人格。平凡なわれわれの人生とはまるで違うが、あまりに純粋な生き方に思わず感情移入してしまう。
旅の途中では悪人も多く登場し、ストーリーも起伏に富んだものになっていて飽きさせない。共に旅する友人は預言者でしばしば現代社会の夢を見て、未来から自分たちの行く末をふりかえる。パン屋の目の前で盗んだパンを村人にこぼしながら分け与える他の聖愚者も愉快。モスクワはるか北のベロゼルスクからリトアニア、ポーランド、アルプスを抜けて地中海への旅も壮大で心踊る冒険譚でもある。
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