漫画家まどの一哉ブログ
「聖伝」 シュテファン・ツヴァイク
読書
「聖伝」シュテファン・ツヴァイク 作
(幻戯書房)
ツヴァイクの残した旧約聖書を原典に書いた「聖伝」5編のうち3編を収録。聖人の苦闘をいきいきと描いて現代社会をも問い返す力作。
「埋められた燭台」:ローマにひっそりと暮らすユダヤ人たち。侵略者に奪われた聖なる燭台の行方をこの目で確かめるため旅立つ7人の老人。そしてその記録を持ち帰るため同行する1人の少年。この魅力的な設定だけでもう物語の渦に巻き込まれてしまう。まさに作者ツヴァイクの人気作家としての腕だが、かと言って丁々発止の冒険が描かれるわけではなく、あくまで聖なるものと共にあろうとする信仰厚き人々の変転を追っていく。
やがて同行した少年は老人となり、侵略者から戻されて祖国の権力者の手に渡った燭台を追いかけるが、「自分を生かしておいた神の意志がなにかあるはず」と信じて皇帝に立ち向かって行く。この老人の行動が実にスリリングで、エンターテイメント的なところはまったくないにもかかわらず、目を離すことができない。いや仕掛けは十分エンターテイメント的なのだが、それに気がつかないほど内容が迫真的。これが信仰だ。
マイノリティとして生きる人々の心の支えとは言え、聖なる物にそこまでこだわることが正しいのかどうかは、考えてしまうところだが、理由を問いただすものではなく、どんな伝統社会にも大切なものはあるのだ。
「聖伝」シュテファン・ツヴァイク 作
(幻戯書房)
ツヴァイクの残した旧約聖書を原典に書いた「聖伝」5編のうち3編を収録。聖人の苦闘をいきいきと描いて現代社会をも問い返す力作。
「埋められた燭台」:ローマにひっそりと暮らすユダヤ人たち。侵略者に奪われた聖なる燭台の行方をこの目で確かめるため旅立つ7人の老人。そしてその記録を持ち帰るため同行する1人の少年。この魅力的な設定だけでもう物語の渦に巻き込まれてしまう。まさに作者ツヴァイクの人気作家としての腕だが、かと言って丁々発止の冒険が描かれるわけではなく、あくまで聖なるものと共にあろうとする信仰厚き人々の変転を追っていく。
やがて同行した少年は老人となり、侵略者から戻されて祖国の権力者の手に渡った燭台を追いかけるが、「自分を生かしておいた神の意志がなにかあるはず」と信じて皇帝に立ち向かって行く。この老人の行動が実にスリリングで、エンターテイメント的なところはまったくないにもかかわらず、目を離すことができない。いや仕掛けは十分エンターテイメント的なのだが、それに気がつかないほど内容が迫真的。これが信仰だ。
マイノリティとして生きる人々の心の支えとは言え、聖なる物にそこまでこだわることが正しいのかどうかは、考えてしまうところだが、理由を問いただすものではなく、どんな伝統社会にも大切なものはあるのだ。
PR
COMMENT