漫画家まどの一哉ブログ
「絶叫師タコグルメと百人の「普通」の男」 笙野頼子
読書
「絶叫師タコグルメと百人の「普通」の男」
「絶叫師タコグルメと百人の「普通」の男」
笙野頼子 作
作家八百木千本は国家によって高級アートマンションに監禁された状態で、小説を書くことを強要されている。この国家を牛耳っているのは絶叫師タコグルメを総帥とするロリコン政治団体「知と感性の野党労働者会議」略して「知感野労」。ブス作家の代表である八百木千本はいよいよ二次元アイドル美ガ原キレ子と、わずかな脳神経を残して少女の着ぐるみを着た状態で合体させられようとしている。間もなく殺されるのだ。たいへんだ!「うわーっ」
かつて「二百回忌」「タイムスリップ・コンビナート」「レストレス・ドリーム」など絶品とも言える名作を残してきた笙野頼子の近年の作品はみなこんな調子の連作で、やりたいほうだいであるがたいへん楽しい。空想的で私小説の裏をかいた設定。本人が太っていてブスであるという、そのブ貌を売りにしてきた話が延々と続き、作家本人に興味の無い読者としてはなにもそんなに…と不思議な気がするが、これもあくまでも創作。また文壇の論争等にも興味がないので、連作の「おんたこ」という敵設定もよくわからないところではある。
それにも増して作者のロリコンに対する敵意・糾弾は猛烈なものがあり、作品全体を通して始めから終わりまでけっして手を緩めることはない。まるでロリコン罵倒がテーマであるかのような小説だ。
これだけ好きなように書いていても、さすがに文章を追っているときの快楽は充分にあって、くだけていても通俗的でない。ところどころ大きな字で「うわーっ」と叫ぶのが効いている。以前読んだ「だいにっほん、おんたこめいわく史」はこの続編で、やはり順番に読まねばなりませんな。
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