漫画家まどの一哉ブログ
「犬の心臓」
読書
「犬の心臓」
ブルガーコフ 作
ドタバタギャグという分野は自分にとっては基本である。しかもそれが世界の名作であるからたまらない。
飢えて凍えて市中をさまよっていた野良犬シャリクは、ある日突然裕福な医師フィリッポヴィチに拾われ、ぜいたくな毎日をおくることになった。しかしそれは恐ろしい外科実験の前ぶれだったのである。唐突に手術を施され死んだ青年の脳下垂体を移植された野良犬シャリク。想定外にも彼はしだいに犬の身を忘れ人間へと進化し始める。そしてできあがった人間シャリクは、とんでもなく下品・無作法・悪辣な男だった。この犬から出来た人間が医師の家でまきおこす数々の騒動の結末やいかに!?
というとんでもないSFもどきの奇想小説。模索するプロレタリアートの国、新生ソビエト社会の矛盾を風刺している面もおもしろいが、けっして単純な寓意小説ではない。浅知恵を身に着け欲望のままに行動するシャリクをはじめ、ムチャな実験手術を行った医師フィリッポヴィチや、真面目なだけの人物は登場しないところがギャグの痛快感をさそうが、これだって実はリアリズムなのかもしれないね。
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