漫画家まどの一哉ブログ
「激流(下)」 高見 順
「激流(下)」
高見 順 作
P+D BOOKS(小学館)
2.26事件に否応なく参加した弟正二。潰えたかと思われた共産党運動に再び加わった兄進一。舞台は満州に移って、麻薬に侵された貧民街へと至る。
首相官邸に籠城した正二たちの部隊は当初皇軍扱いに喜んだが、しだいに賊軍とされたことが明らかに。やがて投降、首謀者処罰の結果に終わる。正二達は満州に派兵される。
密かに共産党再建が進んでいること対し、仮の妻早苗は家庭を顧みることなくぜひ参加することを促す。この女性は常に硬直的に正論を振りかざす理詰めで生きている人物で、心の潤いというものを感じない。どうもこの小説に登場する女性はいやなやつばかりで、読んでいてまるで安らがないのはどうしたわけか。
満洲に活動の拠点を移した進一は、モルヒネやアヘンにやられて全裸で捨てられる人々の暮らす、地獄さながらの貧民窟を見る。この下巻巻末に併録されている「尻の穴」という作品で作者(高見 順)は実際この地獄街区を見聞したことに触れている。住人は地獄と言っても他人事で、自分さえ無事生きてい行ければ他人のことはどうでもよいようだ。作者も現地で簡単な賭け事をして遊んでいたとのこと。
さてこの後満州で進一と正二は出会うことになるはずだが、物語が書かれたのはここまで。
長篇「激流」の世界は表現はわかりやすくテレビの連ドラを見ているようにスラスラと読める。ひょっとしたら通俗小説だったのだろうか。
PR

