漫画家まどの一哉ブログ
「流刑」 パヴェーゼ
読書
「流刑」 パヴェーゼ 作
「流刑」 パヴェーゼ 作
1935年北イタリアトリノ。反ファシズム運動の罪で逮捕された作者は、イタリア半島南端、長靴の先っぽの街プランカレオーネに流刑囚として送られる。
流刑地というと自分などは遥か沖島を想像してしまうが、地続きの村へ列車で到着するのである。なにもない田舎町。もちろん自然は豊かで、主人公(作者モデル)は毎日海へ出て泳ぎ、またぼんやりと水平線を眺めて過ごすのであった。
酒場に集まる男達や街で働く女達との交流。不安な境遇で悩みを抱える彼らとの友情や、熱を帯びた情交がひとしきりあって、やがて主人公は村を去ってゆくのだった。
大きな事件は起らないが、孤独な主人公のさまざまな思いと、移りゆく自然の情景描写が実に美しく心をうつ作品。つまり詩文であって深く意味を解読する能力も自分にはないが、文章を追ってゆくことに沁み入るような快感がある。
解説にもあったが、たしかに叙情詩と叙事詩を混ぜ合わせたような作風で、南国の太陽の下にいながら心地よい寂しさを味わうことができる。
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