漫画家まどの一哉ブログ
「戦後文学放浪記」 安岡章太郎
読書
「戦後文学放浪記」
安岡章太郎 著
安岡章太郎が文壇デビューしてからの各作品について、そのなりたちと当時の生活をふりかえった自伝的エッセイ。
世代論で作家をくくっていくことには疑問を感じるとしても、戦中派というくくりは明らかに特徴的なものがある。戦争で死ぬ以外の道を考えていなかった青年が、敗戦により突然未来へ放り出されてぼうぜんとしているという共通体験を持つ。
しかし「第三の新人」という呼ばれ方をしていた安岡・吉行淳之介・庄野潤三・小島信夫・遠藤周作などの世代は、比べれば少し上の島尾敏雄・椎名麟三・梅崎春生らとは違うのかもしれないが、今になってみるとそれぞれ各作家の個性の違いのほうが大きいと感じる。そして誰しも自分達がそれまでの世代と比べて中途半端な、確固とした立場を持てない世代だと自覚するのは、現在でも同じではないか。
戦争責任の亡霊といった大きなものでなく、自分の心の中に響いてくるもっと卑小な些細なもの。母親が死んだ時、病室の窓から干上がった海に突き立つ何本ものの黒々とした棒杙を見た衝撃。自分にとってはけっして卑小でない何かを、欠落を埋めるように格闘した創作活動は、はたして結果へたどりつけたのだろうか。「海辺の光景」をめぐる回想が胸を打つ。
ところで安岡のややシュールレアリスティックな初期短編も自分は好きであります。
「戦後文学放浪記」
安岡章太郎 著
安岡章太郎が文壇デビューしてからの各作品について、そのなりたちと当時の生活をふりかえった自伝的エッセイ。
世代論で作家をくくっていくことには疑問を感じるとしても、戦中派というくくりは明らかに特徴的なものがある。戦争で死ぬ以外の道を考えていなかった青年が、敗戦により突然未来へ放り出されてぼうぜんとしているという共通体験を持つ。
しかし「第三の新人」という呼ばれ方をしていた安岡・吉行淳之介・庄野潤三・小島信夫・遠藤周作などの世代は、比べれば少し上の島尾敏雄・椎名麟三・梅崎春生らとは違うのかもしれないが、今になってみるとそれぞれ各作家の個性の違いのほうが大きいと感じる。そして誰しも自分達がそれまでの世代と比べて中途半端な、確固とした立場を持てない世代だと自覚するのは、現在でも同じではないか。
戦争責任の亡霊といった大きなものでなく、自分の心の中に響いてくるもっと卑小な些細なもの。母親が死んだ時、病室の窓から干上がった海に突き立つ何本ものの黒々とした棒杙を見た衝撃。自分にとってはけっして卑小でない何かを、欠落を埋めるように格闘した創作活動は、はたして結果へたどりつけたのだろうか。「海辺の光景」をめぐる回想が胸を打つ。
ところで安岡のややシュールレアリスティックな初期短編も自分は好きであります。
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