漫画家まどの一哉ブログ
「戦後史入門」 成田龍一
読書
「戦後史入門」成田龍一 著
(河出文庫)
信頼できる歴史家成田龍一による青少年を対象にした戦後史ガイド。単なるガイドというより歴史を学ぶとはどういうことか、その基礎から解説。
長い長い戦後史のトピックを順番に追っていったところで、若い読者にとっては全くリアリティを得られないまま暗記項目となって終わってしまう。この本も少年向けらしく、事実の記述自体は簡単すぎてつまらない。しかし著者の眼目はそこにはない。
歴史とは単に起こったことの羅列ではなくて、書かれたものであり、そこには何を書くかの選択と解釈がある。なぜその解釈がなされたかによって歴史は何通りもある。この歴史のあり方を理解することができれば、青少年に取っても幸いだが、なかなか社会科的センスのあるなしもあるから難しいかもしれない。
今や好景気を体験したことのない若者にとっては、高度成長期とバブルの混同もみられる時代。その明確な時期と本質的な違いが解る。右肩上がりと言っても高度成長期にも景気循環があり、全体の印象として成長率が高かったこと。また好景気やバブルといっても全員が体感したわけではなく、都市部と農村での違いや業種や階層によっては素通りされただけで実感もなかったことは、まさに触れてほしかったことだ。立場によって歴史は異なる。もとより沖縄や在日コリアン、女性、公害被害者などのマイノリティーから見た歴史の存在も解説。
今が失われた20年であるからこそ高度成長期が輝いて見えるが如く、歴史は移りゆく今を基準にして振り返るものなので、今がどういう今なのかによってしだいに遠ざかる過去がどういう過去なのか見えてくる。日本が未だ戦後を終わることができない理由もよくわかる。
「戦後史入門」成田龍一 著
(河出文庫)
信頼できる歴史家成田龍一による青少年を対象にした戦後史ガイド。単なるガイドというより歴史を学ぶとはどういうことか、その基礎から解説。
長い長い戦後史のトピックを順番に追っていったところで、若い読者にとっては全くリアリティを得られないまま暗記項目となって終わってしまう。この本も少年向けらしく、事実の記述自体は簡単すぎてつまらない。しかし著者の眼目はそこにはない。
歴史とは単に起こったことの羅列ではなくて、書かれたものであり、そこには何を書くかの選択と解釈がある。なぜその解釈がなされたかによって歴史は何通りもある。この歴史のあり方を理解することができれば、青少年に取っても幸いだが、なかなか社会科的センスのあるなしもあるから難しいかもしれない。
今や好景気を体験したことのない若者にとっては、高度成長期とバブルの混同もみられる時代。その明確な時期と本質的な違いが解る。右肩上がりと言っても高度成長期にも景気循環があり、全体の印象として成長率が高かったこと。また好景気やバブルといっても全員が体感したわけではなく、都市部と農村での違いや業種や階層によっては素通りされただけで実感もなかったことは、まさに触れてほしかったことだ。立場によって歴史は異なる。もとより沖縄や在日コリアン、女性、公害被害者などのマイノリティーから見た歴史の存在も解説。
今が失われた20年であるからこそ高度成長期が輝いて見えるが如く、歴史は移りゆく今を基準にして振り返るものなので、今がどういう今なのかによってしだいに遠ざかる過去がどういう過去なのか見えてくる。日本が未だ戦後を終わることができない理由もよくわかる。
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