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漫画家まどの一哉ブログ

   
「すべては消えゆく」 マンディアルグ
読書
「すべては消えゆく」マンディアルグ 作
(光文社古典新訳文庫)

ある日地下鉄で知り合った謎の女。女優であり娼婦でもある彼女と演劇についての薀蓄を語り合ううち、秘密の娼館に誘われるが…。恐怖と破滅へ至る幻想文学。

シュルレアリスム文学は歓迎するも、小説の中のセックス描写がどうも好きになれず、さらに血と薔薇的な痛々しいものとなるとなおさらだ。以前「閉ざされた城の中で語るイギリス人」を読んで辟易していたので、もうマンディアルグはごめんだと思っていたのに、なぜか試しに買ってしまう。

ふたを開けてみると、この作品は幻想耽美的な雰囲気はまるでなく、ただ現実世界で話が進行するばかりだ。しかも地下鉄内で出会った主人公の男と謎の女はいつまでも駅ホームのベンチで話し込んでいて、いっかな駅を出ようともしない。おまけにリアリスティックな会話とは程遠い、芝居掛かった美学・薀蓄の掛け合いをとうとうと重ねるなりゆき。文庫解説でわかったが、この作品は劇論でもあるので、この擬古文的な台詞回しは意図的であるそうな。

そのあとは教会でまた長々としゃべり、いよいよ女の紹介する秘密の娼館へと導かれ、ようやく話は耽美幻想エロチシズムの世界へと移り行くが、驚いたことに性の遊戯は突然打ち切られ、男は身体中に生傷を負って白昼のパリ市街へと追い出されるのである。このあたりのストーリー展開が耽美を脇に置いておもしろく飽きさせない。ちょっと冗長だなと感じてくると事件が進むところが心憎い。

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