漫画家まどの一哉ブログ
「天平の甍」 井上靖
読書
「天平の甍」 井上靖 作
「天平の甍」 井上靖 作
第9次遣唐使のうち4人の修行僧は、それぞれのキャラクター設定が明確で、これでもうお話はどんどん進むというものだ。主人公は学問ひとすじの真面目な男だが、その学友は熱血漢で書物よりも実際に高僧を日本へ連れ帰ることを目的とする。またそれすらも捨て大陸中を放浪する世捨人タイプもあり、僧侶の道を捨て俗化して妻帯してしまう者もいる。以前から唐に滞在していてただただ教典を書き写すことに精力を傾けている男などさまざま。どの道もアリだろう。
当時の仏教がカバーしている領域は広大で、おそらく学問全般を越えて人生や政治にまで及んでいたから、高僧をぜひ日本にお迎えして戒を授けてもらわなければならないらしい。この「日本では律は行われるが戒が行われないのではいけない」という状態がよくわからない。
鑑真という大和上はすごく意志の強い人間で如何なる苦難に出会ってもかたく口を結んで表情を変えずなにを考えているのかわからない。いや、必ず日本へ渡ろうと考えているのだろうが、微笑んでいるときがなくある種正体不明な感じがする。
日本を目指す一行は暴風に流れ流されてベトナム近く海南島まで漂着するのだが、熱帯気候の風土文化に出合っておどろいているところがおもしろかった。
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